スーパー・ハイ・マテリアル別れ話 [雑感]
俺が以前、ずいぶん以前、
「愛情に見返りを求めてはいけないな。そんな態度は二人の関係にあってはならないものだよ。ちょっと失望しちゃったナ。
誕生日を覚えてなかったくらいがなんだ。ひとこと言えば済むことだろう。さっきから様子がおかしいと思っていたら…迂遠な言い回しをしたりして、僕が悪かったなんて気づかせてやろうという算段か? そういうところが気に食わないんだよ。どうせ自分のことをいじらしいとか、こんなにあなたのことを想っているのにちっともかまってもらえない可哀想なア・タ・シなんて悲劇のヒロインぶって悦に入っていたんだろう。僕はそんな低レベルの女と付き合っていたつもりはないんだけどね。
だいたい二十五、六にもなって誕生日だなんだと騒ぎ過ぎなんだよ。君にも僕の性格はわかっているはずだ。誕生日なんてどうでもいいことだろうが。大宇宙には日付なんてものはないんだ。そんなものは人間が恣意的に定めた虚構の産物に過ぎないのであって、やれ交際何周年だのなんだのといったくだらんことは世の愚鈍な連中に任せておけばいいんだ。僕は君ともっと高次の付き合いがしたかったんだよ。
ま、君となら分かり合えるなんて錯覚した僕がいけなかったのかもしれないがね。肉体だけの、獣欲だけの関係なら他にいくらでも代わりはいるんだ。無理して君と付き合うまでもない。別れたっていいんだぞ。
前前から、自分のほうがちょっと年上だからってカサにかかるようなところが我慢ならなかったんだ。これでやっと解放されると思うと、正直せいせいするよ。
ま、これからはせいぜい君に見合った程度の恋愛ゴッコや結婚ゴッコを続ければいいさ。遊び相手は他にいるんだろ? 君にお似合いのあの凡庸な男が、な。
いまさら隠したって無駄さ。僕だってバカじゃあない。僕に隠れてあの男と会ってることくらいすぐにピンときたさ。君の誕生日だって本当は分かっていたんだよ。君は陰であの男と逢引していながら、僕に自分の誕生日のおねだりをしていたワケさ。ヒドイ女だ。ずうずうしい女だよ、君は。でも僕は許すつもりでいたんだよ。君が自分から態度を改めるならね。
非常に残念だよ。君と別れることがじゃない。君という女性を教育しそこなったことが、だ。
もうさよならだよ。言いたいことはまだまだ山ほどあるけどね。これ以上は未練がましくなるから。お互い忘れようじゃないか。
さようなら」
と書いたようなことが、
この本にも書いてあって、「君の教養水準はあんなものじゃないと思っていたんだけどなあ、まあどうでもいいや、さよなら」的なことがすごく印象に残りました。
この手の本としては例外的にムカつきません。
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