背の高い女になりたい [洋楽]
VPライヴ開始前……
「スイませェん」
と人かきわける必要もなく、座席・つり革使用率から言ったら満員に近いが比較的容易に移動できる電車内のようにするするとステージ正面前列へ。
2列目どまんなかにぽっかりあいた0・9人分の空間に姉を、俺はその斜め後ろに立ったのだがここでトラブル発生。
しばらく姉と雑談してると、肩をちょんと突かれたので一拍おいて振り返ったところ、
ムスっとした女がはるか下から俺の顔を見上げている。
「私、前からここに立っていたんですけど、そこに立たれると……」
おいおい、なんだぁ、このお嬢ちゃんは~~~~~~~
イカレてんのか?
それとも自分が14歳だからってオレらが甘いツラするとでも思ってんのか!!
なに勇気振り絞って話し掛けてんだよ?
そんな気骨・気概があるならさっさと2列目の空隙をお前の手で埋めておけばよかったのだよ。
それを、この3列目の…安穏とライブ開始を待っている弛緩した女がぁ。緊張感を持て!
こんなステージ前が分子構造のようにスカスカでライヴが始められるとでも思っていたのかああ!
俺は2・5列目を「創造」したのだッ!
つめようと思えばそれができるのに3列目に甘んじて、そのままの姿勢・環境でライヴに臨めるなどというたるんだ意識のお前にとやかく言われる筋合いは、
ねーぜッッッ!!
と思ったんだけど、かわいそうだから少し脇へよけて、
よりステージ真正面に移動した!
でもなんかスゲーやだ。
俺のこと絶対酷い奴とか思ってるぜ。
「あーあ、VPのファンの中にもこんな奴がいるのね」
とかよからぬ思いを抱きながら俺の後頭部を斜めに見上げているに違いない。
50センチメートル以上も前空けといて「そこに来んな」ってよお~、
まるで路肩走行してきて、「車間があいてるじゃねえかよ!」とか言って、渋滞気味の車列に割り込んだみたいじゃねーか。
割り込まれたくなかったら詰めとけっつーのよー!
いや、だから俺は割り込んだわけじゃ…
車間があいてるから…いや車間とかじゃなくて…
スキマ産業が育たねえだろうがァァァ!!!!
巨大コンツェルンが1から10まで牛耳ってだなあ…
「なんとかメジャー」とかにみんな取り込まれて…
うるせーーー!
きっと、「こいつにVPファンの資格はないわ」とか心の中で烙印押してるに違いない。
なんて執念深い女なんだ。
どいてやったじゃねえかよー!
なんで俺の後頭部を……
いつまでも見てんじゃあねえーェェェッ!(見てないかもしれないけど)
畜生。勝ち誇ってやがる。やがるに決まってるゥ! 道義的に「上」だと。
それは違うぞ。
この女が斜め後ろにいると思うとライブに集中できねーーーー!
……だが、この苦しみ。
この胸の痛みィィィ!
これは「罰」だ…
「あの『お方』を思わずひとり占めしようとした、この卑しい欲望とわたしの弱い心への『罰』!
やはりあの『お方』の、『VPのステージ』は、一人でも多くのファンが存分に楽しめるように配慮すべきもの!
この夜の果てるまでッ!
うおおおおおおおおおおおおおおおお
全身全霊をつくしましょうッ!!」
ドギャアン
よし、
斜め後方を振り返って、
「大丈夫ですか? ちゃんと見えますか?」
って訊くぞーー!
これでお互い気持ちよくライブに臨めるぜー!
声をかけるぞーぉぉぉーーーおおお!
振り返ってェェッ!
さあ!
ニッコリとぉぉぉおお、
「大丈夫そうですか。見える?」
見えますか? 見えるとき、みえみえ、見えれば? 見えようよ。見れ…
……言えなかったーーー。振り返れなかった。
ムスっとした女から白面の小柄な少女に脳内変換して推定17回も唱えたのにー!!!
こうしてヴィナペのライブが幕を開けた。
途中ちらちら様子うかがったけど、楽しんでいるようだった。よかった。
君のおかげで俺も楽しめた。
小さい女の子は大変だな。
俺は背の高い美女になりたいよ。
初めまして。レモン栽培家と申します。
デュードさんのブログは、読んでいるブログに、登録してあります。
これからもどうか、そのままの勢いで、とことん突っ走って下さいませ。
ちなみに、私は小さいです。
背の高い美女になるのは、どうやら無理みたいです。
by (2006-10-03 04:16)
どうも初めまして。
ありがとうございます。
「全身全霊をつくしましょうッ!!」
by 六原土龍斗 (2006-10-03 21:10)